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2026.5.30

筋トレすれば飛ぶようになる?……の意外な落とし穴

こんにちは!店長の村上です。 シリーズ「科学で見るゴルフ」、第3話のテーマは、前回の次回予告でもお伝えした「トレーニングとゴルフパフォーマンスの意外な関係」についてです。

「飛距離を伸ばしたいから、とりあえずジムに行ってスクワットやベンチプレスで筋力を鍛えよう!」と思っている方……ちょっと待った!実は、ただ闇雲に筋肉を鍛えるだけでは、ヘッドスピードは上がらないという意外な落とし穴があるんです。

第3話:筋トレすれば飛ぶようになる?……の意外な落とし穴

「筋肉がつけば、その分クラブを強く振れるから飛距離が伸びるはず」と考えがちですよね。 しかし、ミシシッピ州立大学のジョン・ランバース氏らの研究(※3)によって、驚きの事実が明らかになりました。

この研究では、ハンデ8以下の非常に高い技術を持つ若手ゴルファー(平均約21歳)を集め、6週間にわたって「一般的な筋力・機能トレーニング(ベンチプレスやレッグプレスなど)」を行ってもらいました。 その結果、胸や足の筋力自体は大幅にパワーアップしたにもかかわらず、肝心のクラブヘッドスピード(スイング速度)には向上が見られなかったのです。(それどころか、数値上はわずかに低下する傾向すらありました)。

なぜ、筋肉がついたのにヘッドスピードが上がらなかったのでしょうか?

■ 単に「ムキムキ」になるだけでは飛ばない理由

研究チームは、ゴルフに特化していない一般的な筋トレを行うと、神経系の適応によって筋肉の出力バランスや運動制御(コントロール)が一時的に変化してしまう可能性を指摘しています。 つまり、せっかく手に入れた新しい筋力をスイングという複雑な動きに上手く連動させられず、スイングの再現性が乱れてしまったと考えられるのです。

飛距離を伸ばすためには、ただ筋肉を大きくするだけでなく、鍛えたパワーをクラブに伝える「技術(コーチング)」と結びつけることが不可欠だということですね。

■ では、どんなトレーニングが効果的なのか?

「じゃあ筋トレは意味がないの?」というと、決してそんなことはありません! ニューカッスル大学のクリストファー・J・スミス氏らの研究(※4)では、計画的なレジスタンストレーニングがゴルフのスコア(ハンディキャップ)を大きく改善させることが証明されています。

12〜18歳のジュニアゴルファーを対象に、下半身の安定性、体幹の回転制御、上半身の押し引きを組み合わせた12週間のプログラムを実施したところ、以下のような成果が出ました。

  • 筋力が全体的に大幅向上

  • ゴルフのハンデが平均2.9ストローク減少(改善)

  • 週2回のセッションにしっかり出席(60%以上)した人は、平均3.3ストロークも改善!

さらにこの研究では、スコアの改善と特に強い相関関係があった「鍛えるべきポイント」も判明しています。

  • サイドブリッジ(体幹・側腹部の固定力)の強さ

  • 腕立て伏せなどの上半身・肩まわりの筋持久力

  • 肩や手首の可動域(柔軟性)

ゴルフスイングは、第2話でもお話しした通り「下半身→体幹→腕→クラブ」へとエネルギーをリレーする運動です。スイングの軸を支える「体幹(サイドブリッジ)」や、パワーをスムーズに伝える「肩の可動域」を鍛えて初めて、筋トレの成果がゴルフのパフォーマンスに還元されるのです。

■ 応用編:ラウンド中の「あの動き」が身体の歪みを整える!?

最後に、健康的にゴルフを続けるための面白い最新データ(2024年発表)をご紹介します。 南カリフォルニア大学のジュリエット・ムーア氏らの研究(※5)では、ゴルフ初心者の高齢者(60〜80歳)が9ホールのラウンドを回った際の身体への負荷を分析しました。

歩行距離は約2.9km(約4,100歩)、スイング41回、そしてボールを拾ったりマークを置いたりする「しゃがむ動作」を24回行ったところ、下半身(特に股関節)に一般的な日常生活以上の素晴らしい運動刺激を与えていることが分かりました。

そして、ここからが非常に興味深いポイントです。

  • ゴルフスイングの瞬間:右打ちの場合、右( trail )の股関節に大きな負荷がかかる

  • ボールを拾う・置く(しゃがむ)動作:逆に左( lead )の股関節に大きな負荷がかかる

ゴルフスイングは一方向への非対称な運動なので、どうしても身体の片側に負担が偏りやすい(これが痛みの原因になることも)という弱点があります。しかし、ラウンド中にボールを拾ったりマークしたりする何気ない「しゃがみ動作」が、スイングによる左右のアンバランスさを自然と「相殺(リセット)」してバランスを整えてくれているのです!ゴルフって、本当によくできたマルチスポーツですね。

■ まとめ:科学的なゴルフフィットネスの正解

  • 単に重いものを持ち上げる筋トレではなく、スイングの連動性(キネティック・チェーン)を意識したメニューを選ぶこと。

  • スイング軸を安定させる「体幹(サイドブリッジ)」や「肩の可動域」を優先して整えること。

  • フィジカルトレーニングで土台を作り、それを正しい技術レッスン(コーチング)でスイングに落とし込むこと。

「形」の筋トレを卒業し、ゴルフに活きる「科学的なアプローチ」を取り入れるだけで、あなたのゴルフはもっと健康的になり、飛距離もスコアも劇的に変わるはずです。

📚 今回の引用元の論文

  • ※3:Effectiveness of a Six-Week Strength and Functional Training Program on Golf Performance(著者:John Lamberth 他 / ミシシッピ州立大学)

  • ※4:The Effects of Resistance Training on Junior Golfers’ Strength and On-Course Performance(著者:Christopher J. Smith 他 / ニューカッスル大学)

  • ※5:The Lower-Extremity Biomechanical Demands of Golf Play in Older Adult Novices(著者:Juliet Moore 他 / 南カリフォルニア大学)

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